結論から言うと、英単語を1日に何個覚えるべきかという問いに、誰にでもあてはまる正解の数字はありません。CEFRのレベルごとの語彙量の目安は研究データをもとに示せますが、1日に学ぶ新出単語の数については、それに当たるような決まった目安はありません。むしろ大切なのは、新しく覚えた単語を、間隔をあけてもう一度見直せているかどうかです。以下では、間隔をあけた復習に関する研究をもとに、数よりも見直しの頻度を優先する考え方と、その実践の手順を紹介します。
要点
- 1日に覚える数に誰にでも当てはまる正解はなく、見直しの頻度が定着を左右します。
- 市販の単語帳の「1日◯語」は本の構成に合わせた区切りで、覚えられる上限ではありません。
- 1週間後に思い出したいなら1〜3日後、1年後も残したいなら3週間〜1か月あまり後の見直しが目安です。
「1日◯個」という数字だけでは決まらない理由
1日に学ぶ新出単語の数を決めても、その単語をその後どれくらいの頻度で見直すかによって、定着するかどうかは大きく変わります。一度目にしただけの単語は、時間がたつにつれて思い出しにくくなっていきます。この忘れ方の性質は忘却曲線と英単語の復習タイミングで詳しく紹介しました。新しい単語をどれだけ多く学んでも、見直しの機会がなければ、その多くは思い出しにくくなっていきます。逆に、1日に学ぶ数を少なめに抑えても、それぞれの単語に繰り返し出会う機会があれば、着実に定着させていくことができます。
市販の単語帳が示す「1日◯語」も、多くは本の構成に合わせた区切りです。たとえばIIBCの公式単語教材は、1日20語ずつ90日で学ぶ構成になっています(TOEIC単語をアプリで毎日の隙間時間に覚えるで紹介しました)。こうした数字は、全体を何日で一巡するかという計画の目安であって、20語なら覚えられて30語なら覚えられない、という意味ではありません。数を増やすことよりも、覚えた単語に繰り返し出会える仕組みを作ることのほうが、実際の定着には効いてきます。
間隔をあけた復習についての研究
見直しの間隔について参考になる研究として、Cepeda、Vul、Rohrer、Wixted、Pashlerによる論文「Spacing Effects in Learning: A Temporal Ridgeline of Optimal Retention」(Psychological Science, 2008年)があります。1,350人を超える参加者に一連の事実を学んでもらい、最大3.5か月の間隔をあけて復習させたうえで、さらに最大1年後に最終テストを行った研究です。どのテスト時期でも、復習までの間隔を広げると成績はいったん上がり、その後はゆるやかに下がりました。最適な間隔は、テストまでの期間が長いほど長くなり、テストまでの期間に対する割合で見ると、1週間後のテストでは約20〜40%、1年後のテストでは約5〜10%でした。
この研究は語彙そのものではなく事実の記憶を調べたものですが、単語に置き換えて考えることはできます。1週間後に思い出したい単語なら、最初に学んでから1〜3日後あたりにもう一度見直すのが目安になり、1年後も使える語彙として残したいなら、見直しの間隔は3週間から1か月あまりと、ずっと長くなります。つまり、何日後まで覚えていたいかによって、よい見直しのタイミングが変わるということです。1日に学ぶ単語の数そのものより、この間隔の取り方のほうが、この研究が示す実践的なポイントです。
覚える数より、優先順位と繰り返しを優先する
新出単語の数にこだわるより、優先順位を決めて取り組むほうが現実的です。使用頻度の高い基本的な単語から固めていくという考え方は、CEFRのレベル別に語彙量の目安をまとめた英語の語彙力の目安でも紹介した通りです。まずは今の語彙量に近いレベルの単語から始め、そのうえで、新しく学んだ単語がその後も繰り返し目に入る状態を作ります。一度に手を広げすぎると、それぞれの単語に出会う回数が減り、見直しの間隔もばらばらになりがちです。テーマを絞って少しずつ範囲を広げていくほうが、一つひとつの単語に出会う回数を保ちやすくなります。
数より頻度を優先する実践ステップ
- いまのレベルを確認し、語彙量に近いレベルの単語から始めます。
- 新出単語は少なめに、テーマを絞って選びます。
- 学んだ単語は、その日だけで終わらせず、日をおいて複数回見直します。
- 見直す間隔の調整は自分で管理せず、覚えているかどうかに応じて自動で調整される仕組みに任せます。
しばらく続けて、見直した単語をすぐ思い出せるようになってきたら、新出単語の数やテーマの範囲を少しずつ広げていきます。
数を欲張ると続かなくなる
1日に学ぶ単語の数を多く設定しすぎると、見直しの時間が足りなくなります。新しい単語を学ぶことに時間を使うほど、前に学んだ単語を見直す時間は減り、思い出せない単語が増えていくと、続けること自体が負担に感じられてしまいます。数を減らして見直しの頻度を優先するほうが、長く続けやすく、長く続けられること自体が、語彙を増やすうえでの近道になります。無理のない数から始め、続けられている実感を大事にするほうが、数字にこだわるより結果につながりやすくなります。
語彙量に自信がない場合は、いまどのくらいの語彙を持っているかを先に把握しておくと、無理のない数から始めやすくなります。目安が分かれば、そこから大きく背伸びしない範囲で新出単語の数を決められます。どうしても覚えられないと感じるときの原因と対策は、英単語が覚えられない原因と対策にまとめています。
Watch Your Languageでの実践
Watch Your Languageは、この見直しの間隔の調整を自動で行います。何度も間違える単語ほど早く戻ってきて、覚えた単語ほど次に表示されるまでの間隔が空いていきます。単語はiPhoneのロック画面・ホーム画面のウィジェットとApple Watchの文字盤に表示され、表示が切り替わる間隔は1分から1週間の間で選べます。新しい単語が入ってくるペースも設定で変えられるので、1日に何個覚えるかを自分で数えて管理する必要はありません。語彙パックはテーマとCEFRのレベル別に分かれているため、まずは自分の語彙量に近いレベルのパックから始め、慣れてきたら少しずつ範囲を広げていく使い方ができます。忙しい社会人向けの覚え方は社会人の英単語の覚え方、隙間時間を使った方法は隙間時間で英単語を覚える方法で紹介しています。
Watch Your Languageは、「1日何個」を数える代わりに、見直しの間隔をアプリに任せられる語彙学習アプリです。iPhoneのウィジェットとApple Watchの文字盤に単語が表示され、苦手な単語ほど早く、覚えた単語ほど間隔を空けて繰り返し出てきます。