忙しい社会人が英単語を効率よく身につけるには、根性で覚える量を増やすより、忘れる仕組みに逆らわない覚え方を選ぶほうが近道です。具体的には、忘却曲線に沿ったタイミングで復習する間隔反復、単語を文脈やテーマとセットで覚える方法、頻度の高い単語や仕事で使う語彙から優先して選ぶこと、そして机に向かう時間を新たに作らず隙間時間に組み込むことです。学生時代のように毎日決まった授業で単語に触れる機会がない分、社会人には社会人なりの覚え方が必要になります。以下で、それぞれの考え方と具体的な進め方をまとめます。
なぜ大人は覚えたはずの単語を忘れるのか
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは19世紀後半、自分自身を被験者にして無意味な音節のリストを覚え、時間をおいて覚え直すのにどれだけ時間がかかるかを記録しました。ここから描かれたのが、いわゆる「忘却曲線」です。この曲線の縦軸は「覚えている割合」ではなく「節約率」で、覚え直しにかかった時間が、最初に覚えたときと比べてどれだけ短くて済んだかを表します。2015年には、オランダのヤープ・ミュレとユーリ・ドロスがこの実験を追試し、結果をPLOS ONEに発表しました。被験者を務めたドロスの節約率は、20分後に約47%、1日後に約32%、6日後に約17%でした。エビングハウス自身の記録(20分後に約58%、1日後に約34%)より全体に低めですが、覚えた直後に大きく下がり、その後はゆっくり下がっていくという曲線の形はよく似ており、論文は130年前の忘却曲線が再現されたと結論づけています。社会人が「覚えたはずなのに思い出せない」と感じるのは意志の弱さではなく、一度覚えた単語を、忘れていく途中で一度も見直さずに放置してしまうことが大きな原因です。学生時代は授業や小テストが強制的に復習の機会を作ってくれていましたが、社会人になるとその仕組みが自然には存在しないため、意識して作る必要があります。
間隔反復(スペースド・リピティション)とは何か
忘却曲線への対処法として広く使われているのが、間隔反復(スペースド・リペティション)という考え方です。仕組みは単純で、同じ単語を一度にまとめて繰り返すのではなく、時間を空けて何度か出会うようにします。覚えたばかりの単語は短い間隔で、よく覚えている単語は長めの間隔で見直すのが一般的です。間隔を空けて学習したほうが記憶に残りやすいという「間隔効果」は、記憶研究のなかでも特に安定した結果の一つです。2006年にPsychological Bulletin誌に掲載されたセペダらのメタ分析では、続けて学習した場合と間隔を空けて学習した場合を比べた271件の比較のうち、間隔を空けても成績が上がらなかったのは12件だけでした。同じ分析では、覚えておきたい期間が長いほど、成績がもっとも良くなる復習の間隔も長くなることが示されています。紙の単語帳でこれを手作業でやろうとすると、どの単語をいつ見直すかを管理する手間がかえって負担になりますが、アプリであればこの管理を任せられます。Watch Your Languageは、スマート・レペティションのアルゴリズムで単語を繰り返し表示し、覚えるまで同じ単語に何度も出会えるようにしています。
文脈とテーマの中で覚える
単語を一つずつ切り離して暗記するより、使う場面と結びつけて覚えたほうが、実際に使うときに思い出しやすくなります。方法は主に二つあります。一つは、テーマ別にまとまった単語を学ぶことです。旅行やビジネス、食事といったテーマでまとめて覚えると、実際に使う場面を想像しやすくなります。たとえばビジネスのテーマであれば、会議やメールで繰り返し出てくる語彙がまとまっているため、覚えた単語をすぐ仕事の場面に当てはめられます。Watch Your Languageの語彙パックは、こうしたテーマとCEFRのレベル(A1からC2)で分類されています。もう一つは、自分が実際に読んだり書いたりした文脈から単語を拾うことです。仕事のメールや資料、旅行先のメニューなど、自分にとって意味のある文脈で出会った単語は記憶に残りやすいため、Watch Your Languageには手書きのメモや資料を撮影して単語を抽出する機能や、CSVやExcel、Googleスプレッドシートから単語をまとめてインポートする機能も用意されています。
どの単語から覚えるか
覚える単語の数を増やすより、優先順位を決めることのほうが効果的です。基準は主に二つあります。一つは頻度です。日常会話や仕事の文章でよく使われる単語ほど、費やした時間に対する見返りが大きくなります。Watch Your Languageのパックは、CEFRのA1からC2までのレベルに分かれているため、初級のA1やA2のパックから始めれば、基本的な単語から順に固めていけます。もう一つの基準は、自分の仕事です。同じ「中級」の単語でも、日常的にメールを書く人と、接客や販売に携わる人とでは必要な語彙が異なります。ビジネスに関連するテーマのパックを選ぶ、あるいは自分の仕事の資料から単語を取り込むことで、覚えた単語がそのまま仕事で使える語彙になります。頻度と自分の仕事、この二つの基準さえ押さえておけば、教材を増やすよりも先に、いま持っている単語リストの優先順位を見直すだけで効率が上がることも少なくありません。
忙しい社会人の現実的なルーティーン
まとまった学習時間を新しく確保しようとすると、たいてい長続きしません。効果的なのは、すでにある習慣に単語との接触を重ねることです。たとえば、通勤電車を待つ数十秒、コーヒーが入るのを待つ間、昼休みにスマートフォンを開いた瞬間、会議の合間に時計を見る瞬間、寝る前に時刻を確認する瞬間など、1日のうちに画面を見る回数は決して少なくありません。そのたびに単語が目に入る状態を作っておけば、まとまった学習時間がなくても、間隔反復に必要な「繰り返し出会う」という条件は自然に満たされます。大切なのは、毎回長く見ることではなく、短い接触を何度も積み重ねることです。
完璧を目指さないほうが続く
忙しい社会人が英単語学習でつまずく典型的な原因は、能力ではなく、完璧主義です。1日休んだだけで「もう続かない」と感じてやめてしまう、あるいは覚えていない単語が積み上がって手をつけられなくなる、といった経験がある方は少なくないはずです。間隔反復の考え方に立てば、1日空いたところで忘れかけている単語がもう少し増えるだけで、取り返しがつかない失敗にはなりません。次に画面を見たときにその単語がまた表示されれば、そこから復習を再開できます。毎日決まった時間に机に向かうという発想を手放し、日常の中で単語に触れる回数を淡々と積み重ねていくほうが、結果として長く続きます。
アプリが役立つ場面
ここまでの考え方は、アプリがなくても実践できます。ただし、忘れかけたタイミングを自分で判断して単語を復習し直す作業は、手動で続けるには手間がかかります。Watch Your Languageは、iPhoneのロック画面とホーム画面のウィジェット、Apple Watchの文字盤のコンプリケーションに単語を表示し、単語が切り替わる間隔(更新頻度)は1分から1週間の間で自分で選べます。単語帳を開く時間を取るのではなく、日常的に画面を見る行動そのものを復習の機会に変える設計です。もちろん、文法や発音、会話の練習は別の方法で補う必要がありますが、覚えたはずの単語を忘れないようにする部分は、こうした仕組みに任せることができます。関連して、Apple Watchで英語を学ぶ方法や、Apple Watch対応の学習アプリも参考にしてください。
Watch Your Languageは、iPhoneのロック画面・ホーム画面のウィジェットとApple Watchの文字盤に単語を表示し、スマート・レペティションのアルゴリズムで、覚えるまで単語を繰り返し表示します。テーマとCEFRレベル別のパックに加え、写真からの単語抽出やCSV・Excelインポートにも対応しており、仕事や自分の生活に関わる単語を優先して覚えることができます。