結論から言うと、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)という枠組み自体は、レベルごとに「何語を覚えるべきか」という公式の語数を定めていません。ただし、Cambridge英語検定の合格者などの語彙量を測った研究をまとめた論文(Milton, 2010)では、レベルが高い学習者ほど、知っている単語の数も多い傾向がはっきりと示されています。ここでは、その研究にもとづく語彙数の目安と、各レベルで実際にできることを、出典を示しながら紹介します。
要点
- CEFRにはレベルごとの公式な語数基準はなく、レベルは「何ができるか」で定義されています。
- 研究の目安では、頻度上位5000語のうちB1で2750〜3250語、B2で3250〜3750語、C1で3750〜4500語を知っています。
- まずは頻度の高い上位2000語を固め、そのあと仕事や生活に関わるテーマの語彙を足すのが現実的です。
CEFRに語彙数の公式基準はあるか
CEFRの2001年の文書は、レベルごとの語彙の「範囲」を、覚えている単語の数ではなく、何ができるかという形で説明しています。CEFR以前の1980年代から1990年代初めの資料には、現在のB1にあたる「Threshold」で約2000語、現在のA2にあたる「Waystage」で約1000語という具体的な単語リストがありました。2001年のCEFR文書はこうしたリストを否定したわけではありませんが、レベルそのものは単語リストではなく、技能や言語活動、コミュニケーションの目標によって定義しています。また、研究で語彙量を数えるときの「単語」は、辞書の見出し語とは数え方が異なります。後で紹介するXLexというテストでは、単数形と複数形、原形と-s・-ed・-ingなどの規則的な変化形をまとめて1語と数える「レンマ」という単位が使われています。この経緯は、スウォンジー大学のジェームズ・ミルトンがEUROSLAモノグラフ(2010年)にまとめています。
研究にもとづく目安:レベルごとの語彙数
公式の基準がない一方で、実際の学習者の語彙量を測定した研究はあります。前出のミルトンの論文によると、Cambridge英語検定に合格した学習者を対象に、頻度上位5000語のうちどれだけを知っているかを推定するXLexというテストで語彙量を測定したところ(Meara & Milton, 2003)、CEFRのレベルとおおよそ次のような対応が見られました。
| レベル | 対応するCambridge英語検定(当時の名称) | 頻度上位5000語のうち知っている語数の目安 |
|---|---|---|
| A1 | Starters・Movers・Flyers | 1500語未満 |
| A2 | Kernel English Test | 1500〜2500語 |
| B1 | Preliminary English Test | 2750〜3250語 |
| B2 | First Certificate in English | 3250〜3750語 |
| C1 | Cambridge Advanced English | 3750〜4500語 |
| C2 | Cambridge Proficiency in English | 4500〜5000語 |
出典:Milton, J. (2010). The development of vocabulary breadth across the CEFR levels. EUROSLA Monographs 1(原データはMeara & Milton, 2003)。
この数字は、使用頻度が高い上位5000語のうちどれだけを知っているかを示したものであり、専門用語なども含めた語彙の総量ではありません。同じ論文によると、C1・C2のレベルは、頻度上位5000語のほとんどを知っている状態と結びついています。また、書かれた文章を十分に理解するには、全体で8000語から9000語程度の語彙が必要になるかもしれないという、ポール・ネイション(Nation, 2006)の推計も紹介しています。レベルが高いほど語彙量も多いという傾向は、この論文が紹介する英語・フランス語・ギリシャ語の学習者のデータ(Milton & Alexiou, 2009)でも、おおむね共通して見られました。また、語彙サイズのテストの成績によって、リーディングの試験で平均以上の点を取れるかどうかの変動の72%を説明でき、ライティングでは最大52%、リスニングでは39%を説明できたという分析(Stæhr, 2008、同モノグラフに引用)も紹介されています。
各レベルで実際にできること
CEFRの文書(Council of Europe, 2001)は、語彙の「範囲」についてレベルごとに次のような説明を与えています(前出のミルトンの論文に引用されている内容です)。A1は「具体的な状況に関連した基本的な単語や言い回しを、個別に知っている」段階、A2は「見慣れた状況で日常的なやり取りをするのに十分な語彙を持っている」段階です。B1になると「家族や趣味、仕事、旅行など身近な話題について、多少の言い換えを交えながら自分の考えを伝えるのに十分な語彙」を持つとされ、B2は「自分の専門分野や一般的な話題について幅広い語彙を持ち、表現を言い換えて繰り返しを避けられる」段階に進みます。C1は「言葉に詰まったときも、遠回しな言い方でうまく切り抜けられるだけの、幅広い語彙を使いこなせる」段階、C2は「慣用表現や口語表現を含む非常に幅広い語彙を使いこなし、言葉の持つニュアンスの違いにも気づける」段階とされています。数字だけを見るより、この「できること」の変化に注目したほうが、自分がいまどのあたりにいるかを判断しやすいはずです。たとえば、旅行先で簡単なやり取りができればよいのか、仕事のメールを自分の言葉で書きたいのか、専門分野の込み入った話を言い換えながら説明したいのかによって、目指すべき段階は変わってきます。
語彙を増やす優先順位
覚える単語の数を増やそうとするとき、優先順位を決めずに手当たり次第に覚えるより、使用頻度の高い単語から順に固めるほうが効率的です。前出のミルトンの論文でも、頻度の高い上位2000語を知っているかどうかが、リーディングやライティングの試験で平均以上の成績を取れるかどうかの一つの目安になるという研究(Stæhr, 2008)が紹介されています。まずは使用頻度の高い基本語彙から固め、そのあとに仕事や生活に関わるテーマの語彙を足していく、という順番が現実的です。通勤時間や隙間時間を使って単語に触れる方法は隙間時間で英単語を覚える方法で、忙しい社会人向けの覚え方の考え方は社会人の英単語の覚え方で、それぞれ詳しく紹介しています。
Watch Your Languageでの活用
Watch Your Languageの語彙パックは、テーマとCEFRのレベル(A1からC2)で分類されています。まずはA1・A2の基本的なパックから始め、レベルを上げながら語彙を積み上げていく、という使い方ができます。何語覚えたかという正確な数字にこだわりすぎず、いま学んでいる単語が自分の生活のどんな場面で役立つかを基準に選ぶほうが、長く続けやすくなります。
Watch Your Languageは、A1からC2までのテーマ別パックを備えた語彙学習アプリです。iPhoneのロック画面・ホーム画面のウィジェットとApple Watchの文字盤に単語を表示し、間隔反復のアルゴリズムで、覚えるまで同じ単語に繰り返し出会えるようにしています。