結論から言うと、英語の勉強が続かないのは、意志が弱いからではなく、多くの場合、続けるための設計に無理があるからです。完璧にこなそうとする計画や、まとめて長時間机に向かう前提の計画は、忙しい日が一日でもあると崩れやすくなります。何度も三日坊主を繰り返してきた場合、原因は根性や集中力ではなく、同じ形の計画を繰り返し立ててしまっていることにあるのかもしれません。以下では、続かなくなる典型的な原因、習慣が身につくまでに実際にかかる時間、崩れにくい計画への作り直し方、そして一度やめてしまった後の再開の仕方を順に紹介します。
要点
- 続かない原因は意志の弱さではなく、忙しい日に崩れる計画の作り方にあることが多いです。
- 習慣が身につくまでの日数は中央値で66日、範囲は18〜254日で、数日変化がなくても失敗ではありません。
- きっかけは「歯磨きの後」のように既存の行動に結びつけ、量は忙しい日でもできる分に抑えます。
「続かない」の正体は意志の弱さではない
英語の勉強が続かないとき、多くの人はそれを自分の意志の弱さのせいにしてしまいます。しかし実際には、計画そのものに無理がある場合が少なくありません。毎日1時間机に向かう、といった計画は、達成できる日には手応えがありますが、達成できない日が続くと「もう取り返しがつかない」という感覚につながり、そこで完全にやめてしまう原因になります。続けることを目的にするなら、計画は最初から、忙しい日でも崩れない小さな単位で作っておく必要があります。もう一つ見落とされがちなのが、「続けられなかった過去」が、次に挑戦する意欲そのものを削ってしまうことです。以前に三日坊主で終わった経験があると、「自分には無理だ」と決めつけて、新しい方法を試す前からあきらめてしまいがちです。しかし、続かなかった原因が計画の作り方にあったのなら、計画を変えるだけで結果は変わります。
習慣が身につくまでには、思っているより時間がかかる
続ける工夫を考える前に知っておきたいのが、新しい行動が習慣として定着するまでにかかる時間です。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのフィリッパ・ラリーらが2010年にEuropean Journal of Social Psychology誌で発表した研究では、96人の参加者が食べる・飲む・体を動かすといった行動を一つ選び、毎日同じ状況で12週間続けながら、その行動をどれだけ自動的に感じるかを記録しました。データが曲線によく当てはまった39人について、自動的に感じる度合いが上限の95%に達するまでの日数を調べると、中央値は66日、範囲は18日から254日と、人によって大きな差がありました。数日や1週間で変化を感じられなくても、それは失敗ではなく、まだ途中であるだけです。
同じ研究では、行動を1日しなかったことの影響も調べています。しなかった日の翌日には自動性の得点がわずかに下がりましたが、統計的に意味のある差ではなく、1回抜けたことによる長期的な影響は見られませんでした。英語の勉強も同じで、1日空いたところで、それまでの積み重ねが消えるわけではありません。3日や1週間で自動的に続けられるようにならないのは、意志が弱いからではなく、単純にまだそこまでの日数が経っていないだけ、という可能性のほうが高いといえます。
崩れない設計に作り直す
続けるための設計は、大きく三つに分けて考えられます。一つ目は、行動のきっかけを決めておくことです。「時間ができたら」ではなく、「歯磨きの後」「電車に乗ったら」のように、すでにある行動の直後を英語に触れるきっかけにします。きっかけがあいまいなままだと、毎回「今やるべきかどうか」を判断する必要があり、その判断自体が面倒になった時点で先延ばしにされてしまいます。二つ目は、一回あたりの量を減らすことです。週に一度まとめて長く学ぶより、短くても毎日触れるほうが、同じ単語に出会う回数は多くなります。やる気がある日に量を増やすのは構いませんが、基準は「忙しい日でもできる量」に置いておきます。三つ目は、記録をシンプルにすることです。できた日とできなかった日を細かく記録しようとすると、記録すること自体が負担になり、続かない原因が一つ増えてしまいます。何をどれだけやったかを覚えておく作業は、仕組みに任せてしまうほうが続けやすくなります。
| 設計の工夫 | 崩れやすい例 | 崩れにくい例 |
|---|---|---|
| きっかけ | 「時間ができたら」 | 「歯磨きの後」「電車に乗ったら」 |
| 量 | 「毎日1時間」 | 「忙しい日でもできる量」 |
| 記録 | 正解・不正解を毎回メモ | 記録は仕組みに任せる |
一度やめてしまった後の再開の仕方
しばらく英語から離れていた後に再開するとき、やりがちなのが、空いた期間の分を取り戻そうとして量を増やすことです。しかし、遅れを取り戻す計画は最初の計画よりさらに重くなるため、同じ理由でまた崩れやすくなります。再開するときは、以前の計画の続きからではなく、一番小さな単位から始め直します。前に覚えた単語を忘れていても、それは想定内です。忘却曲線と英単語の復習タイミングで紹介した実験では、忘れたように見えても、覚え直すときの手間は最初に覚えたときより少なくて済むことが示されています。すでにある行動に英語を重ねる具体的な方法は、朝活で英語を続ける方法と隙間時間で英単語を覚える方法で紹介しています。何から手をつければいいか分からない場合は、社会人の英語独学の始め方も参考にしてください。以前に続かなかった経験があっても、それは今回も続かないという意味ではありません。
アプリが役立つ場面
設計を変えても、きっかけを覚えておき、どの単語を見るかをその都度選ぶ作業は残ります。続けるうちに負担になりやすいのは、実はこの部分です。Watch Your Languageは、iPhoneのロック画面・ホーム画面のウィジェットとApple Watchの文字盤に単語を自動で表示し、覚えるまで単語を繰り返し表示します。きっかけは「画面を見たとき」に固定され、どの単語を出すかはアプリが決めます。何日か触れない期間があっても、それまでに学んだ内容はiPhoneアプリに記録されているので、次に画面を見たときから続きが始まります。「今日はやらなかった」という日があっても、翌日に取り戻そうと量を増やす必要はありません。いつも通りに戻るだけで十分です。
Watch Your Languageは、勉強を始めるきっかけを「画面を見たとき」に変えてしまうアプリです。Apple Watchの文字盤とiPhoneのウィジェットに単語が表示され、何度も間違える単語ほど早く戻ってくるので、三日坊主の後でも、画面を見れば続きから再開できます。
まとめ
英語の勉強が続かない原因の多くは、意志の弱さではなく、忙しい日を想定していない計画の設計にあります。習慣が自動的に感じられるまでの日数は人によって18日から254日と幅があり、1日抜けても長期的な影響は見られなかったことが研究で示されています。きっかけを決め、量を減らし、記録をシンプルにし、やめてしまった後は小さな単位から再開すれば、以前は続かなかった行動も、今度は違う形で続けられます。